日本語訳 · 原著 Daniel Bourdeau『Unsolved Historical Ciphers』は CC BY 4.0 で公開されている。本ページは JIC による翻訳で、原著者の公式版ではない。訳文に相違がある場合は英語原文が優先する · 英語原文を見る ↗
al príncipe · demás de los cambios que hasta aquí se an hecho por n[uest]ro mandado con Antonio Fucar
CX U DCC LXX d[ucad]os de a LXV gruesos = 110,770ドゥカート

皇帝 → フェリペ王子 · 平文の控え、暗号なし · 1543–1554年(目録では1527年10月26日)

「Andrea del Burgo から Gattinara へ、1527年」は、フッガー家の貸付をめぐるカール5世からフェリペ王子への書簡である

カール5世
差出人カール5世
フェリペ2世
宛先フェリペ2世

Archivo General de Simancas, Estado leg. 1563 fol. 572(DECODE R9970)。フェラーラ駐在の皇帝の使節 Andrea del Burgo から大法官 Gattinara への1527年10月26日付の4ページの暗号書簡で、未解読として目録に載っている。スキャン画像に暗号はない。それは「al príncipe」と題されたスペイン語の控えの、訂正の入った2つの下書きで、皇帝が息子にアントン・フッガーとの為替契約について伝えている。この控えは DECODE の示す日付より少なくとも16年後のものである。

Daniel Bourdeau · 投稿

方法:暗号ではない

概要。DECODE R9970 とその典拠である Galende Díaz の1994年のシマンカス暗号一覧(p. 163)は、AGS Estado leg. 1563 fol. 572 を、Andrea del Burgo がフェラーラから Gattinara に宛てた1527年10月26日付の書簡で、「alphabet, graphic signs, numerical」の暗号によるものとしている。4枚の画像には文書館自身のスキャンバナーにその請求記号があるが、暗号は写っていない。文書館の1ページ目と2ページ目には同じ控えの2つの下書きがあり、どちらも al príncipe と題され、大幅に訂正されている。3ページ目は2つ目の下書きの終わりで、4ページ目は白紙である。最初の下書きは「demás de los cambios que hasta aquí se an hecho por n[uest]ro mandado con Antonio Fucar, de que os hab[em]os avisado con los correos pasados」で始まる。皇帝はスペインの摂政であるフェリペ王子に、アントン・フッガーとの間でさらに110,770ドゥカート(「CX U DCC LXX」)の為替が結ばれたこと、元本と利子は合意した期日に支払われるべきことを伝えている。ローマ数字と千を表す U の記号が、DECODE の「numerical, graphic signs」というタグの理由である。フェリペは1527年5月に生まれ、1543–1548年と1551–1554年に王子としてスペインを統治したので、この控えは1527年ではなくそれらの年のものである。Burgo の書簡そのものは、DECODE にも、PARES にも、Calendar of State Papers にも、Tomokiyo にも見つからず、その実際の所在はまだわかっていない。

01 レコード

文書館の1ページ目の上部:請求記号 E. 1563-572、見出し al principe、ローマ数字で金額を記した1つ目の草稿の冒頭数行
文書館の1ページ目(DECODE 画像2)、上部:請求記号「E. 1563 – 572」、欄外の「al príncipe」、最初の下書きの書き出し。5行目に金額「CX U DCC LXX」がある。画像:Archivo General de Simancas, Estado leg. 1563 fol. 572、スキャン 0001、DECODE R9970 経由。

DECODE は4枚の画像を 3, 1, 2, 4 の順で表示している。文書館のスキャンバナー(AGS_EST_LEG_1563_0572_0001 から 0004)と葉の鉛筆の番号が正しい順序を示す:

文書館のページDECODE の画像内容
1P2請求記号。「al príncipe」。最初の下書きで、削除と行間の書き加えが多い
2P3最初の下書きの終わり、続いて2つ目の下書き。これも「al príncipe」と題されている
3P12つ目の下書きの終わり。日付、署名、宛名はない
4P4白紙。裏写りのみ

どの面にも暗号化されたものはない。すべての行が、乱雑な書記体で書かれた普通のスペイン語である。

02 下書きの内容

2つの下書きの書き出し。略語は角括弧で展開し、削除された語は省いた。これは主要箇所の読みであって、完全な校訂ではない。どちらの下書きも大幅に訂正されており、いくつかの略語と後のほうの行は確実には読めていない。

下書き1。 demás de los cambios que hasta aquí se an hecho por n[uest]ro mandado con Antonio Fucar, de que os hab[em]os avisado con los correos pasados, a convenido, por estar en lo que estamos, hazer este cambio de CX U DCC LXX d[ucad]os de a LXV gruesos …

下書き2。 demás de los cambios que hasta aquí se an hecho, a convenido hazer otro de CX U DCC LXX d[ucad]os de a LXV gruesos …

al principe と見出しのある2つ目の草稿。書き出しも金額も同じ
文書館の2ページ目(DECODE 画像3):「al príncipe」と題された2つ目の下書きで、書き出しと金額を繰り返している。画像:Archivo General de Simancas, Estado leg. 1563 fol. 572、スキャン 0002、DECODE R9970 経由。

日本語訳:「これまでわれわれの命によりアントン・フッガーとの間で結ばれ、前回までの便でそなたに知らせた為替のほかに、現状に鑑み、65グロート建てで110,770ドゥカートのこの為替を結ぶ必要が生じた……」。さらに先で2つ目の下書きは、金が「el principal con intereses a los plazos」(元本を利子とともに期日に)返済されること、手形が「cumplidas, guardadas y observadas」されることを求めている。支払期日「a los vj de …」が示されているが、年はない。

03 1527年でない理由

フェリペは1527年5月21日にバリャドリッドで生まれた。DECODE が示す日付の5か月前である。アスィエント(融資契約)についてフッガー家と交わした件で皇帝が「el príncipe」に宛てた書簡は、フェリペの摂政期、すなわち1543–1548年と1551–1554年に属する。彼が「王子」でなくなったのは1554年7月、メアリー・テューダーとの結婚に際してナポリ王となったときである。草稿には年も場所も記されておらず、この融資は特定のフッガー家のアスィエントとまだ照合されていない。それらを列挙する Ramón Carande のCarlos V y sus banquerosは参照していない。

スキャン画像には文書館自身のバナーに引用どおりの請求記号が入っているので、DECODE 上で画像が取り違えられたわけではない。Galende Díaz の一覧は一部を Carmona のTratado de criptografía(1894年)に拠っており、Burgo の書簡にこの典拠を挙げている。典拠が誤っているか、あるいはレガホ(文書束)の古い番号付けを用いているかのどちらかである。

04 Burgo の書簡:何を調べたか

暗号化された Burgo の書簡は今も Estado に存在する可能性があるが、見つけるには文書館の目録か現地訪問が必要である。R9970 には、その暗号に関わるものは何もない。

05 出典

メモ、画像一覧、解読ログはリポジトリのフォルダ targets/burgo1527/ にある。