01 書簡と鍵
R366 はフェルディナント自身の手紙で、8ページあり、Egregie fidelis dilecte. Accepimus quaternas literas tuas で始まり、Datum in nostra et Imperii Ciuitate Augusta Die XXIIJ Mensis Januarij Anno Domini MDXLVIIJ で終わる。Ferdinand と署名され、副署と Joanni Marie Malvetio in Constantinopoli という宛名がある。暗号部分は1、4、5、6、7ページにあり、つねに平文の文の途中に置かれているので、平文部分のラテン語が解読の連続的な検証となる。
鍵を再構成する必要はなかった。R366 の周辺の DECODE レコードを探すと、同じかごく近い請求記号に3つの兄弟レコードが見つかった。R367 は「Rex Ferdinandus I. ad Malvezium, a° 1548」(軍事史文書館 1548/3, 1)で、4ページにわたって Tabella I と Tabella II を載せる。同音字を伴う文字アルファベット、重字を表す数、2つの符号音節の一覧である。R386(National Széchényi Library, Quart. Lat. 2254. 15)は Chiffre Johann Malvezzi’s と題された1枚で、同じアルファベットに冗字(ヌル)を書き出したものである。R368 は同じ請求記号にある短い暗号の紙片で、ad 2 と記されており、この手紙の解読ではない。R367 と R386 は後世の文書館による表の再構成であるが、手紙にぴったり合う。
02 方式
同音字を伴う単一アルファベット暗号で、図形記号で書かれている。錬金術と惑星の記号(♀, ♁, ⊙, ☉)、ギリシア文字(λ, π, α, Π)、そして別の値で使われるラテン文字である。a は s、c は b、e は r、f は m、k は e、M は a、P は n、T は p、v は f。よく出る文字にはそれぞれ2つか3つの記号が当てられる。重字は数で表す。3 = cc、4 = dd、5 = ff、6 = gg、7 = ll、8 = mm、12 = tt、13 = ss、14 = rr、15 = pp、16 = nn、そして 50 = bellum、51 = pax。
冗字(ヌル)には、暗号の中に紛れ込ませたラテン語らしい語そのもの(etiam, idcirco, atque, cum, Porro, Dar, Der, Dec, spo, spu)と、ばらの文字(b, d, n, z, π)がある。そのため暗号の箇所にはラテン語の語が散らばっているように見えるが、それこそが何の意味もない部分なのである。同じ語は、暗号の別の箇所では記号で綴られた本物の語としても現れる。
音節による短いノーメンクレーターが主要人物を表す。ki = Rustanus(リュステム・パシャ)、ka/ke = Passa、le = 皇帝カール5世、Bi = フランス王、Ab = フランス人、Nas/Ras/ye = スルタン、Nis = Junus Bey、Sis = Ibrahim Pasha、Ros = ペルシア人、Vb = ポーランド王、zes = イザベラ王妃、zis = ヤーノシュ・ジグモンド、zos = 修道士ジェルジ(Martinuzzi)、zi = ハンガリー、Cad = コンスタンティノープル、Eb = 使節、Mis = Justus de Argento。
実際上の難しさは筆跡にある。ある系統の記号(軸の上の小さな円で、単独のもの、円が2つのもの、十字のついたもの)が u、e/ae、t を兼ね、それらを区別する筆画はしばしば失われている。そうした記号はすべてラテン語から決めなければならず、そのため下の解読はある箇所では連続し、別の箇所では途切れている。
03 オスマン宮廷のフランス人
最も長い政治的な箇所は4ページにあり、和平についての平文の文から暗号に入り、また平文の文に戻る。暗号部分は次のとおり。
… Galli tam multipliciter et dolose hanc pacem subuertere conantibus, qui sane id non ob aliam causam faciunt quam ut, ex quo Rex Galliae et sui similes sacram Caesaream et catholicam regiam maiestatem, fratrem et dominum nostrum charissimum, uiribus suis lacessere non audent, imperatoris Turcorum sumptibus … contra maiestatem suam Caesaream …; quae sibi ab illis praeter aequum et honestum adimi nihil patitur … Sed magnitudo eius atque etiam ipse Rustanus Passa dubitare — [平文:] minime debent de syncera fide et animo et Maiestatis suae Caesareae et nostro erga hanc pacem.
日本語訳。フランス人は多くのやり方で、しかも欺瞞的に、この和平を覆そうとしている。そうする理由はほかでもない。フランス王とその同類は、フェルディナントの最愛の兄である皇帝を自らの兵力で攻撃する勇気がないので、それをスルタンの費用でやらせたいのである。しかしスルタンとリュステム・パシャその人は、この和平に対する皇帝の、そしてフェルディナントの誠意を疑ってはならない。

これこそが、この箇所が暗号にされた理由である。前後の平文は1547年の休戦に関するありふれた事柄で、ハンガリー国境を越える襲撃、長年の戦争のあいだ略奪で生きてきた盗賊、リュステム・パシャに持ち込まれた苦情である。イスタンブールのフランス使節一派への非難と、ハプスブルク家がスルタンに信じてもらうことをどれほど必要としているかの告白こそ、使者に読まれてはならない部分なのである。
04 使節の金
暗号の後半、4ページの下部から5ページと6ページにかけては、Malvezzi の俸給と、それがどうやってコンスタンティノープルに届くかについてである。手紙の中で最も連続した部分である。
Quo uero ad intertentionem, tibi per proximas literas nostras significauimus nos decreuisse ut tibi pro tua ordinaria intertentione et pro reliquis extraordinariis sumptibus, quos pauci momenti esse posse nobis ostensum est, mille quingenti ducati annuatim numerentur, exceptis sumptibus … mittendis tabellariis propriis faciendi erunt, de quibus tibi solutionem seorsim curaturi sumus. Mandabimusque Justo de Argento, secretario nostro, qui cum pecuniis propediem se in uiam dabit, ut a te computum de receptis et expositis accipiat. Per eundem quoque Justum tibi summam illam duorum millium et octingentorum ducatorum, quos te isthic non solum pro tuo intertenendo et sustento, sed in aliis etiam negotiis nostris expositos debere nobis scripsisti, necnon mille et quingentos ducatos pro tua intertentione ad futurum unum annum, a prima die mensis Martii nunc uenturi computandum, transmittemus: ita quod ab ipso Justo summam quattuor millium et trecentorum ducatorum simul accipies. Praeterea scribimus Gulielmo S[…], sicuti et Argento, litterarum huiusmodi exemplo uidebis, ut in casu aliquo ingruentis necessitatis (de qua nos tam tempestiue admonere non ualeres) tibi ad requisitionem tuam, in una uel pluribus uicibus, usque ad tria milia ducatorum nomine nostro, mediante aliquo honesto et conuenienti interesse, de quanto tu et Justus cum eo conuenire debebitis, mutuo dare non recuset, et securus esse debeat se, ad exhibitionem chirographi tui et nominatione nostra, solutione Venetiis, indubitanter habiturum et accept[at]urum esse. Volumus autem et requirimus, pro tua erga nos fide, … non nisi in necessariis … ut secretarius noster cum pecuniis isthuc uenturus eum secum adducat.
日本語訳。彼の生活費について。前の手紙では、通常の生活費と小さな臨時の出費をまかなうものとして年1,500ドゥカートとし、その他の費用は除くと伝えた。至急で送らねばならない使者の費用は別に支払う。フェルディナントの秘書 Justus de Argento が近く金を携えて出発し、Malvezzi から受け取った金と使った金の勘定を受け取る。彼に託してフェルディナントは、Malvezzi が自らの生活のためだけでなく国王の他の用務のためにも現地で立て替えたと書いてきた2,800ドゥカートと、来たる3月1日から数えて翌1年分の1,500ドゥカートを送る。一度に受け取るのは計4,300ドゥカートである。さらにフェルディナントは銀行家 Gulielmo S[…] に、写しを Malvezzi と Argento にも送りつつ、宮廷に前もって知らせる暇のない急な必要が生じた場合には、Malvezzi の求めに応じて1回または数回に分けて、国王の名で最大3,000ドゥカートを貸すよう書き送る。利率は Malvezzi、Justus、貸し手のあいだで取り決める正当で妥当なものとし、貸し手は国王の名による Malvezzi の署名入りの証書と引き換えに、ヴェネツィアで確実に返済を受けられるものとする。フェルディナントは彼の忠誠を信頼し、本当に必要なときにだけ使うよう命じる。代理人を1人見つけ、秘書が金とともに連れてくることになっている。
05 ほかの箇所
1ページ、部分的に解読。Malvezzi の報告の一部がフェルディナントの秘書たちに宛てて書かれたという平文の文に続き、リュステム・パシャとの会話で語られたことを扱う。sermone … [ki ke = Rustanus Passa] … tecum habitos … odium propter tractatum nobiscum … pacis constituendae autor, nunc uero conseruandae promotor [et] defensor sibi conciliarit … praeterea quid … responderis — そして平文の et quid pro eiusdem pacis conseruatione faciendum censeas に戻る。リュステムは和平を結び、今はそれを守っている人物であり、ハプスブルク家と交渉したことで自らに敵意を招いた。フェルディナントは、Malvezzi が彼に何と答えたかを知りたがっている。
6ページ下部、部分的に解明。リュステムに問われた場合に Malvezzi が言ってよいこと、そして国境(in eiusdem confiniis)と和平に関する何か。
7ページ、部分的に解読:捕虜について。スルタンの命令で捕らえられている者と、捕虜となった国王自身の臣民に触れる。de captiuis quos iussu Imperatoris Turcorum … si necesse fuerit … subditos captos fuisse intellexerimus … quod ad … seruandae pacis sinceritatem pertinet — そのあとに平文の結び Et haec sunt quae in praesentiarum ad literas tuas respondenda duximus. が来る。
06 残るもの
- 未解読の部分。1ページの quid と responderis のあいだの2行。6ページの23–26行(記号は転写したが、ラテン語は確定していない)。7ページの捕虜の箇所の途中の5行。それ以外はすべて連続して、あるいは単語ひとつを括弧に入れる程度で解読されている。
- 評価。03節と04節で引用した箇所は、両側の平文につながる連続したラテン語になっているところでは H(確実)である。金額(2,800、1,500、4,300、3,000ドゥカート)は語で綴られ、互いに整合しているので H。C(蓋然的):ordinaria、ulciscantur、magistrum とそれに続く句。M(可能性あり):Gulielmo S[…] と読んだ銀行家の名、1ページの語 conciliarit、7ページの語 astrictos と mutuam。
- 校訂版とは照合していない。Malvezzi の1548–1552年の書簡は Austro-Turcica 1541–1552(ミュンヘン、1995年)に収録されているが、オンラインで自由に読めず、参照していない。フェルディナントの官房は登録用の写しを平文で保管していたので、この手紙の内容はおそらくそこに印刷されている。このページが加えるのは、この写本の解読と、DECODE のレコードの中からその鍵を特定したことである。
- 画像。文書館の画像はその許可なしに公開できないため、このページには複製を載せていない。
07 出典
- DECODE(de-crypt.org)レコード R366、MILITARIA_ARCH_1548_3、ブダペスト、Hadtörténelmi Levéltár 1548/3、8ページ、ラテン語、状態は「partially decrypted」。画像はログインが必要で、パブリックドメインではない。
- 鍵:DECODE R367(MILITARIA_ARCH_1548_3_1、4ページ、Tabella I と II、NM による転写、2020年10月)と R386(NSZL Quart. Lat. 2254. 15、Chiffre Johann Malvezzi’s)。DECODE R368(MILITARIA_ARCH_1548_3_ad2)は同じ請求記号にあるもう1枚の暗号の紙片である。
- Austro-Turcica 1541–1552. Diplomatische Akten des habsburgischen Gesandtschaftsverkehrs mit der Hohen Pforte im Zeitalter Süleymans des Prächtigen, ed. Srećko M. Džaja with Günter Weiß, prepared by Karl Nehring and Ernst D. Petritsch(Südosteuropäische Arbeiten 95、ミュンヘン、1995年):Malvezzi の書簡の校訂版。
- この写本の解読はウェブ上に見つからなかった(検索、2026年9月)。
メモ、実際に用いた鍵、行ごとの読み:targets/malvezzi1548/。
